借金まみれの夫

学生時代パン工場でアルバイトをしていた。学生だけでなく、色々な年齢の人が働いており、休憩時間に煙草をふかしながら、その人たちのヘビーな話を聞くのが日課となっていた。「姑がひどくて苛められてて。早く死ねって思うわ。」「旦那が朝からビール飲んでるのよ。アルコール依存症かしら。」など、大学生の自分には遠い出来事のような話を、ぺちゃくちゃしゃべるのだ。
パン工場は常に人手を必要としており、履歴書さえ出せば誰でも次の日から働けたので、実に様々な人種がいた。その中でも借金まみれの旦那さんを持つ人の話は忘れられないヘビーさだった。パチンコやギャンブルにはまり、サラ金から何度も借金を繰り返す夫との生活、サラ金の取立て屋の凄まじさ、どんどん膨れ上がっていく借金・・・まるで三文映画のような出来事のオンパレード。なぜ離婚しないのか聞いたら、夫の借金の保証人になってしまったから、離婚しても保証人としての立場は変わらないんだそう。つまり離婚してもサラ金から取立て屋がくるってことだ。なんだか理不尽だが、よく考えずに保証人になったおばさんも悪い。でもこのまま離婚しないでいると、旦那がポックリ死んだら、私の娘まで借金の相続をしてしまうことになるから、早く離婚しようとは思うと言っていた。おばさんが「これウチの娘、可愛いでしょ。」と携帯の写真を見せてくれたら、思いのほか本当に可愛くて、明日法学部の弁護士志望の友達に、法律的におばさんの役に立つ情報を聞いてみようと思うオレってつくづく馬鹿だと思う。