二人の父親

少々複雑な家庭に育った友人。実の父親は彼が母親のお腹の中にいたときに離婚したそうだ。実の父親と母親の間には1歳年上の兄がいて、兄は父親に引き取られたそうだ。母親も実の父親もその後すぐにそれぞれ再婚。友人は育ての父親と特別養子縁組したため、実の親子同然として育ったそうだが、彼が10歳の時に亡くなり、以来、母親は女で一つで彼を育ててきたそうだ。母親はあまり体が丈夫なほうではなかったので、仕事はしていたそうだがそれほど稼ぐことはできず、お金がなく苦労して育ったらしい。今でこそ立派な男になっているが、まさかそんな苦労をして育ったとは思いもしなかった。
そしてつい最近、実の父親が亡くなったそうだ。葬式に参列したそうだが、かなり豪華な葬式だったらしい。大きな会社の社長さんだったそうだ。実の兄にも初めてそこで会い、話をしたそうだ。自分でもびっくりするくらい顔が似ていたらしい。しかしいかにも裕福な家庭で何不自由なく育ったおぼっちゃまといった感じだったそうだ。ちなみに財産は、実の子供でありながら友人は育ての父親と特別養子縁組したため、一切貰えないらしい。友人は、母親が離婚しなければ、こんなに苦労することなくまったく別の人生を歩んでいたんだろうと話していた。